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子どもの頃からの夢だった水彩画を始めました

明るい光の差し込む、講師・出口雄大さんの自宅兼教室で。机を挟んで細やかなコミュニケーションをとりながら授業は進む。「失敗ということはないんだよ」という出口さんの言葉に心も解き放たれて、筆が進んでいく。

「先生、よろしくお願いします」。一枚の水彩画ができるまで

紙の白地を生かした“ネガ描き”で〇に挑戦

昔から絵を描くことが大好きだったという風吹ジュンさん。水彩画も自己流で楽しんできたが、内心ずっとコンプレックスがあった。

「“実は知らないんだよね”っていう描き方しかできないで来たんです。描きたいものを描くときに、自分に技術がないのは楽しくないですよね。だから、習いたくて」

この春、友達を通じて出会いがあり、画家の出口雄大さんに師事することとなった。先生宅で開かれる教室に通って、今日が4回目。差し向かいで和やかに授業は進む。

これまでに描いた作品や、好きな画家の画集などを見ながら、今日学ぶテーマを決める。机の上には、どこか懐かしい道具一式が並んで。

出口 いつもどおり、はがき大の紙に今日は〇を描いてみましょうか。〇と言っても、紙の地の白を“抜き”で描く。つまり周りに色を塗って〇を作るという“ネガ描き”のスタイルですね。私が描いたものを参考にしてもらって。
風吹 周りに色を塗るんですね。じゃあ、グレーを作ってみます。
出口 グレーと言ってもいろいろありますよね。その微妙なニュアンスを感じることは、とても大切です。
風吹 なるほど。んー、私のこれは、ちょっと茶色が多いのかな?
出口 自分の好みの色でいいですよ。大事なのは、自分の納得いく色を作れているかどうかです。味の調合のように作ればいいんです。
風吹 って軽くおっしゃる(笑)。じゃあ、これで行きます。筆先で〇を描いて色をのばせばいいんですよね。思い切って、いよーっと! あ、〇じゃなくなっちゃった!
出口 多少いびつでも大丈夫。それより、乾燥しないうちに、周りを一気に塗ること。固まりますから。

本日の課題、できました!
○を描くって意外と難しい!
試行錯誤しながら辿り着いた、自分好みの納得いくグレー。紙の上に筆をおくと、ひと息に〇を描いてみる。
初心者用の道具セットです
初心者用の道具セット。丸筆、平筆などのほか、H、2B、3Bなどの鉛筆各種が専用ケースに納まっている。
みんなもやりたくない?
「見てたらやりたくならない?」とスタッフに声をかける風吹さん。描いているときの幸せそうな笑顔は格別だ。

水彩は水との共同作業。水に委ねる面白さがある

風吹 先ほどの絵が乾きました。
出口 いいですね。この上に色を重ねていきましょう。こうやって筆で色をのせるだけでも……。
風吹 おー、前に塗った色が滲んで混ざるんですね。となると、別の色を足しても面白いですね。
出口 不思議な世界でしょう。やはり水彩は水で描くもの、水との共同作業なんです。その分、操り切れないんだけど、そこが面白い。水に委ねる面白さがあるんです。
風吹 薄ければ薄いほど、重ねていけて、いろんなニュアンスも出ますよね。この〇にも、色を重ねよう。ピンクを作ろうかな。明度を上げるには、水なんですね。
出口 そう。水を混ぜれば混ぜるほど明るくなる。ピンクを作るのに、子どもの頃、赤に白と習うでしょう? そうではなくて、本当は赤に水なんです。水でのばす。
風吹 なるほど。ピンクか、グレーか迷うな。うーん思い切って!
出口 あ、これは大成功ですね。
風吹 先生はいつも「失敗はない」っておっしゃいますよね。描き損じたものにもう一度色を重ねてみると違う世界ができるとか。
出口 何に対しての失敗かということですよね。たとえば「本物そっくりに描く」とか、ある基準が設けられたときにそれは出てくる話で。そうでない限りは、水彩の持ち味さえ生かしていけば、あとは自由なんだと思いますよ。

“水彩は水で描くもの。操り切れないけど委ねる面白さがある”