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美しく活きる。 第19回

シニアコム編集部がMASTER会員さんにライフスタイルをインタビュー。

定年後は農業をやろうと決めた

農業ボランティアでご活躍なさっているとか。

ボランティアの中でも、医療や震災に関するところはよく知られているのですが、農業ボランティアにはあまりスポットが当たっていなくて。特に東京都内農業は人手不足で、大きな問題を抱えています。

農業というと、農作物の生産と思いがちですが、生産したら販売して売り上げを上げないと続かないので、生産にとどまらず販売まで幅広く活動しています。

定年まではどのようなお仕事をされていたのですか?

大学卒業後、民間企業に就職しました。火力発電所や原子力発電所などのプラントを制御する装置を製造する仕事でした。定年は60歳でしたが、最後の10年間は部門を移って、ソフトウェア開発と販売の仕事をしていました。それまでの人間関係を駆使して、大手企業の工場長さんや役員さんなどに向けて、コンサル的なことをして働いていましたね。中小企業診断士の資格を持っていたので、より効率を上げて仕事をするにはどうしたらよいかということを具体的に考え、提案していました。

定年まであと2年ほどとなった時に、会社から定年後の意向を聞かれました。その時、もうこれで辞めようって、そして自分の生まれが農家だったので、東京で農業をやろうと決めました。それから定年までの間に、少し学校に通って農業の勉強をしました。また、インターネットで農業ボランティアを探して、国立市の梨ボランティアに参加し、梨を1年間育てるお手伝いをしました。

都市農業の大変さを知る

東京都で農業をする、というイメージがあまりピンとこないのですが。

そうですね。都民の多くの方はおそらくイメージがないでしょうね。私は、立川市に住んでいるので、定年を迎えて早速、農業をやりたいと市役所に相談にいきました。すると農家さんは、どこも人手不足なので、いつでもどこでも紹介します、と言われて。一番近くの農家さんを紹介してもらい、農業に携わることになりました。定年前の梨ボランティアで、東京都は土地も高いし、税金も高い、その中で農業をどう成り立たせていくのか、技術だけじゃなくて実際の課題について、園主さんからいろんなお話を聞かせていただきました。

農業をやろうと決めたときは、何をやろうかな、ただ畑を借りて野菜でも作ればいいかなんて簡単に考えていましたが、実際はそんなに簡単なものじゃないと、特に東京で農業をやるということの大変さを教えてもらったんですね。その時に、なんとなく自分の中に、こんなふうにやったらいいんじゃないかなという思いが浮かび、それを定年後にいかせたらいいなと思うようになりました。

いよいよ農業デビューというわけですね。

紹介してもらった農家さんでは、まずは1年間、どんなものをどのくらい作っているのか、どこに販売しているのか、お父さんからいろいろ教えていただき、勉強しました。それを全部データにとって分析するのですが、その時のボランティアは私を含めて2名、とてもじゃないけど足りない、まだまだ畑に余裕はあるので、人を増やせば、うまくいくはずと思い、市の掲示板や市に関係しているHPなどで、農業ボランティアの募集をさせていただきました。それで半年で10名ほど集めたんです。やっと人手が集まったので、そこからは技術の改革ですね。それまでは少量品種をたくさん作って、市場にどーんと売っていたのですが、もっと儲かるように、多品種を作って直売所を作りませんか?という提案をしました。そこが新しい一歩だったと思います。

直売所はその農家さんの家に作ったので、その告知もしなくてはなりません。近くのスーパーに看板を出させてもらえるようにお願いして。スーパーさんもそういうものをやってくれると逆に人が集まるから、お互いにWINWINでやりましょうと快諾してくれました。直売所に来てくれたお客さんには、試食を出して採れたての野菜を食べてもらったり、レシピを作って実際に調理したものを食べてもらったり、お店で売っている野菜とは違うということを意図して表に出すような形にして、少しずつ売り上げを上げて行きました。今でもその直売所は週3日営業しており、多くのお客さんが来てくれます。

お客さんの満足感をもう一歩先に

他にはどんな改革をされたのですか?

幸いにも、いろいろな問題で困っている農家さんから相談のお話をいただくようになりました。ある農家さんでは、お父さんが急に入院してしまい、息子さんが農業を継ぐことになりました。畑には沢山の出荷できる野菜がありますが、収穫は一人ではできない、どうしたらいいかと相談がありました。

そこで、お客さんに直接摘み取ってもらって売ったらどう?と提案しました。お客さんは、測り売りで安価の野菜が購入できるだけでなく、ちょっとした収穫体験ができるので、楽しみながら、より満足感の高い買い物ができるんですね。その農家さんは、今では市場出荷よりも、摘み取り販売で成り立っています。

そういった発想の転換というか、アイデアはどういうところから出てくるのですか。

サラリーマン時代にソフトウェアを販売していた頃、買っていただいたソフトを使ってもらって、いかにして生産効率をあげるというアイデアを出さないと売れなかったんですね。具体的な手法を明確にしないと。その時の習性が残っているんだと思います。お客さんが野菜を買って、美味しく食べるということが満足感につながっていたのですが、もう一歩踏み込んで収穫するという楽しみもつけたんですよね。

とはいえ、畑を貸すから作ってください、となると行き過ぎてしまって、時間がない、うまくいかないなどの不満がでたり、やらなくなったりする。だから、採る楽しみだけ味わっていいですよ、作るところまではちゃんと私たち農家がやりますよ、と割り切ったんですね。

それがすべてボランティアというところに頭がさがります。

もう65歳を越してくると、自分の体力も衰えてくるし、ビジネスマンみたいに朝決まった時間に起きて会社に行って、という縛られた世界ではなく、本当に好きなことをやって社会貢献できるということが最高なんです。

ビジネスにすることを考えたこともありますが、定年までしっかりビジネスマンを生きたので、老後の生活は悠々自適が一番です(笑)。今後は都市農業の経営コンサルタント的な仕事に、もう少し注力していきたいと考えています。困っている農家さんはまだまだたくさんいらっしゃるので、その農家さんたちの助けになりたいと。

最後にシニアコムを見てくださっている方々にメッセージをお願いします。

私自身、60歳を過ぎて、人生一人では生きていけないなとつくづく感じています。60歳を超えた方たちは、それまでの人生を一生懸命生き抜いてきたわけです。自分が気付いていないだけで、いろんなノウハウや技術を持っているんですよね。やってみると意外に、私ってこんなことできるの?っていうことが結構あるんですよ。

だから、全然知らない世界であっても、どんどん飛び込んで、自分から新しい人生を作っていってほしいなと思います。新しい自分を見つけて、いきいきと生きていくのは本当に幸せなことだと思います。新しい自分探しにチャレンジしていきましょう!