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美しく活きる。 第23回

シニアコム編集部がMASTER会員さんにライフスタイルをインタビュー。

50歳の誕生日に急性心筋梗塞に

急性心筋梗塞になった時は、どんな状況だったのですか?

朝、会社に出勤する時に、電車に乗っていて、左肩がすごく痛くなってきたんです。前日に力仕事をしたので、筋肉痛だろうと思っていました。でも、今度は息苦しくなってきたので、一旦途中の駅で降りて少し休みました。それからまた電車に乗ってそのまま会社に行ったんですよ。その日はそれから出張に出ないといけなかったので、準備をしていたのですが、部下から顔色が悪いと言われ、息苦しいのではあはあとやっていたんですね。そこで家内に電話したら、一度病院に行けと言われ、上司に相談して病院に行くことにしました。総合病院に行ったので随分待たされて、その間に息苦しくなって倒れてしまったんです。そこからは意識不明。すぐに手術になりました。一命は取り留めましたが、その後も8回くらい救急車で運ばれています。医者からはあと1回血管が詰まったらおしまいと言われていますよ。

病気と一緒に生きていらっしゃるのですね。

手術をするたびに、承諾書を書くんです。心筋梗塞の手術としては、血管にカテーテルを通していくのですが、だんだん歳をとっていくと血管の弾力性がなくなっていくから、成功しない時もある、それでも手術しますか、という承諾書ですよね。8回も書きましたので、死に対しては考え方が変わりましたね。でも、だからこそ、生きていることに喜びを感じ、感謝をし、自分の存在価値は何かということを考えるようになりました。そして、「生涯人材育成」ということを掲げました。

技術畑出身から、気付けば人に教える立場に

大学卒業後は、どんなお仕事をしていたのですか?

家電メーカーに就職しました。最初は、設計と品質管理に携わりました。昔は今と違ってひとつの工場でオールマイティに製品を製造していたので、メーカーの全製品に携わりましたね。その部署で約10年を過ごし、次の10年はショールームの管理や、電気ストアさんへ修理の技術を教育するような、サービスの部署に移りました。その次の10年は、FQC、いわゆる市場品質管理の部署で、製品の故障の原因を探り、分析し、新製品開発に生かすという業務に従事しました。

私のメーカーは「品質」が売りでしたので、ただ作るだけではなく、壊れた時の検証、壊れた時に火災などの二次被害を出さないようにすることが絶対だったのです。製品が壊れたら、原因の原因の原因を調べ、とことん追求して、新製品ではそこを改良してまた市場へ送りだしていくわけです。

ちょうどその頃に、心筋梗塞になったのですね。

そこから半年くらいは、入退院を繰り返し、動きの速い部署の責任あるポジションには付くことができませんでした。その頃、会社では「21世紀プロジェクト」なるものが発足していて、人材をしっかり育てていこうという方針になり、「人材育成センター」を作ったんです。そこで、私が持っている技術のノウハウ、能力なんかを若い社員に継承してほしいと、センター長にならないか、と話があり、定年までの15年間、センター長として勤め上げました。「人材育成センター」では、新入社員の教育はもちろん、マナー、営業、技術などあらゆる教育を、社員向けに行っていました。全国の支店支社から、新入社員から中級、上級、管理職、などが研修を受けに来ました。私自身も、人に教えるというところでは素人でしたから、外部の大学や専門学校に、非常勤講師として出て、教え方を学びました。
また、技術研修の時は、その分野のスペシャリストを講師に呼び、私自身がその講義を聴き、学び、教えられるように勉強して覚えたわけですね。

教える、伝えることで後世に残していきたい

今はどんなお仕事をしているのですか。

技術系の先生方に登録してもらい、技術研修などを行う会社の代表をしています。この会社、本社はバンコクに置いています。娘がバンコクに住んでいたので、定年後バンコクに行き、大学でボランティアの講師をしていました。言葉があまり通じなくても、資料に図や絵を描いて、学生に見せると、彼らの言葉で説明や単語を書いてくれるんです。また、私は日本語で講義をしますが、日本語を学んでいる学生が彼らの言葉に直したりして、皆で学び合うんですね。振り返れば、メーカーにいた頃に、電気ストアさんへ教えることから始まったのですが、今は、日本だけじゃなくて、アジアの方にも教える機会が増えて、もっとたくさん教えたいという思いが強くなっています。

今、69歳ですが、今後のことはどのようにお考えですか。

毎年年賀状に「生涯人材育成」と書いています。死ぬまで、立って教えていたいです。呼ばれたらできる限りそれに応えたいと思っています。今はその場に行かなくても、通信で講義ができたりもするので、あらゆる手段を使って、教えることに携わっていたいです。
講義しながら死にたいなと思っていますよ。

最後にシニアコムを見て下さっている方々にメッセージをお願いします。

1年に1回でもいいので、自分の存在価値を考えてほしいなと思います。家庭や地域などで、自分は本当にいてほしい存在なのか、いないよりいた方がいい存在か、いると困る存在ではだめですよね。だから自分を振り返り、ランクアップしていってほしいなと思います。病院のベッドでいつも考えていました。本当に生きててよかったのかな、会社に戻った方がいいのかな、家庭にいなくてもいいのかな、など、自分の存在価値をずっと考えていました。それで私はやっぱり、最終的には、絶対いなきゃ困る存在になりたいと思ったんです。
その存在価値を高めるために、人材育成に尽力することに決めました。閉じこもらないで、ぜひ外に出て、生涯現役で「教える」ことをして、必要とされる存在になってもらいたいですね。